ローン難民の発生

ローン難民の発生

現在、消費者金融の利用者は1400万人、そのうち200万人がいわゆる多重債務者といわれる。もう少し詳しい数値は、全情連の調査でわかる。それによると、5社以上の消費者金融から融資を受けている多重債務者は約230万人にのぼり、平均借入額は200万円を超えている。

 

自己破産のイメージ

 

こうした人たちに対して、国や自治体はどういう対策を取ろうとしているのか。最近、注目を集めているのは「貸し渋り」である。多くの貸金事業者は新しいモデルを構築するとともに当座の貸出しを絞って、出費を抑える方向に向かっている。特に過払い金返還を恐れて、新規顧客に対しては、与信を厳しくしており、これまで5割の新規顧客獲得率たったものが、3割まで落ちているという。そこまでしなければ生き残れないほど厳しい状況になっているのだ。しかし、これが利用者に思わぬ影響を及ぼしつつあるのだ。いわゆる信用収縮が起こり、1000万人を超える人たちが消費者金融を利用できなくなっているという。ローン難民の発生である。

 

多重債務者だけでなく、上客だった個人事業主でも簡単には借りられなくなると言われており、多くの利用者がヤミ金に駆け込むか、自己破産するしかないという極めて異常な事態となりつつあるのだ。

 

■ 自己破産申立件数と自殺者数の推移

 

多重債務に苦しむ消費者の増加と消費者金融・事業者ローン業者の社会的躍進のまとめ

 

自己破産数の推移グラフ

政府・自治体の取り組み

これに対して国は「多重債務問題改善プログラム」を発表して、全国の自治体に向けてプログラムの実現に向けて強い圧力をかけはじめた。この多重債務問題改善プログラムの柱の一つが、多重債務者に低金利で資金貸付をするセーフティネット事業、いわゆる日本版グラミン銀行である。グラミッ銀行とは、ノーベル平和賞を受賞したムハマドーユヌス氏が設立したバングラデシュの貧者のための銀行で、女性向けに起業資金の無担保融資をしている。これを参考に、各地域での非営利機関(生協、NPO、中間法人など)や民間金融機関(労金、信金、信組など)が中心となって、多重債務者の相談に乗るとともに、低金利で貸付を行なう活動を展開しようというものである。

 

そのモデルとなっているのが岩手信用生協である。この生協は1969年に相互扶助の理念を生かして生活資金の貸付を行う生協法人として設立され、組合員を対象に低金利で貸付け消費者の自立を助けようとしている。その中心となっているのがスイッチローン(消費者救済資金貸付制度)と呼ばれるスキームだ。これは信用生協、県内市町村、岩手弁護士会消費者問題対策委員会、提携金融機関の4者による多重債務者の問題を解決するための総合的なシステムである。単に融資を行うだけでなく、生活再建のための債務整理や訴訟費用のバックアップを行うなど、解決に至るまで適切なアドバイスと具体的な解決策についてケアしてくれる。つまり、多重債務で困っている人をさまざまな機関が複合的に支援し再生に導こうとするシステムである。この試みは一定の成果をあげているため、今回のプログラムでもその中心的な役割を担うことになった。

 

また、岩手信用生協の優れた仕組みを全国的に展開するために、06年には信用生協の全国団体組織が結成され、ここが相談員育成の研修などを手がけていく。一方、自治体で音頭を取るのはやはり東京都の役割になりそうだが、すでに相談窓口を設置するなど急ピッチの整備に追われている。

 

自治体が多重債務者救済に熱心に動く理由の一つは、給食費や水道料金といった公共料金や税金の不払いに対応するためでもある。不払いの人の多くが実は多重債務者という現実があり、まず多重債務から救済して、それから発生する過払い金を滞納中の給食費などの返済に充ててもらおうという狙いもある。一石二鳥の効果を考えているわけだ。

施策に効き目はあるのか

金融庁は09年末の改正法の本格施行までにこうした施策を実行しようとしているのだが、これらのプログラムにどれくらいの実効性があるのだろうか。筆者にはとても難しいように思える。役人と学者が海外の事例を参考にして、机上の理論だけで描いた青写真にすぎないという感じがするのだ。

 

07年夏に、ある消費者生活センターで講演をしたのだが、その際に「多重債務問題改善プログラム」の不十分さを思い知らされた。そこの自治体も多重債務者のための相談窓口を設ける予定になっているが、担当者には何のノウハウもないため、「多重債務者が相談に来ても私たちではどうにもなりません。結局は東京の弁護士さんに頼むことになります」という始末だった。

 

他の自治体でも同じような調子で、相談窓口といっても結局は弁護士へのつなぎ役でしかないのだ。消費者金融から有能な社員を引っ張ってきてアドバイザーにするくらいの努力をすればいいのに、そんな知恵は回らない。結局は弁護士を儲けさせるための仕組みに過ぎないのだろう。

 

日本版グラミン銀行にしても、金融庁がモデルに据えたのだろうが、わが国にはこうした低利での無担保融資の伝統はない。海千山千の多重債務者を相手に焦げつかせずに融資するのは至難の業だろう。さらにこの事業から収益をあげていくビジネスモデルが描けていない。素人集団が融資をするとなると、新銀行東京のように焦げつきが続出するといったリスクもあるだろ

 

このように、少し考えただけでも「多重債務問題改善プログラム」は穴だらけ。掛け声ばかり先行して、実効性が見えない。それがわかるから、現場は早くも途方に暮れているのだ。このままこれらのセーフティネットを実行に移せば、貸金市場はより一層の混乱を来すだろう。そして、目的の多重債務者の解消にはほど遠いことになるのではないだろうか。

 

「いっそ、上限金利を23%くらいに戻すとかのソフトランディングを考えてもよいのではないか」(カード会社幹部)という声もある。混乱を避けるためにも改正法の完全施行までの間に、現実的な是正(総量規制の撤廃など)が検討されることを望みたい。

 

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